高校を出たら就職するつもりでいたが、希望した国鉄に落ちて、当時〝商経科〟だったいわき短大に入学した▼とはいえ数字が大の苦手。簿記などで神経をすり減らしていた中に、意外な授業があった。湯本高教頭で定年退職し、教授となっていた柳沢一郎先生の「地学」。地質学・古生物学の専門家だった先生の薫陶を受け、〝商経〟はそっちのけで2年間、化石に没頭した▼その中でフタバスズキリュウと発見者の鈴木直さんを知った。若き日の鈴木さんのバイブルとなったのが柳沢先生の著書「阿武隈山地東縁のおいたち」だった。1人で山や沢に分け入り、来る日も来る日もハンマー片手に化石探しに没頭するような少年は今もいるのだろうか▼草野心平記念文学館の「宮沢賢治展」では有名な「雨ニモマケズ」の実物手帳が展示されたように、石炭・化石館ではレプリカではない、フタバスズキリュウの実物化石が展示されている。こんな機会はまたとないはずだ。