小川小で大切に保存されている皇后美智子さまから贈られた新美南吉の童話▼それは同小戸渡分校(閉校)の子どもたちが皇居を花で飾ろうと故郷のヤマユリの球根を届けたお礼だったことは知られているが、そのエピソードが30日放送の美智子さまの特集番組で紹介された▼それだけに昨年、両陛下がいわき市を訪れになった際、当時の子どもたちと57年ぶりの再会を果たすという感動を呼べなかったのは痛恨事だった。球根を持参した当時の古山一郎先生は87歳、子どもたちも70の坂を越した。戸渡の集落は今、原発事故による放射能に汚染されて住民は避難、分校は除染基地になってしまった▼ただの再会ではない。戸渡が再開するきっかけになったかもしれないのだ。そこで思う。皇居で咲くヤマユリのいくつかを、戸渡に里帰りさせることはできないか。イノシシに球根を食い荒らされるなどしてヤマユリが激減した戸渡の野を、今度は皇居のヤマユリが飾るのだ。