新元号が「令和」に決まった。発表予定時間が約10分遅れ、やきもきしたものの優しい響きが伝わってきた。出典は万葉集巻五、梅花の歌三十二首并せて序。まさにわが国の古典文学をもとにされた▼浅学ながら引用文からは、古来から先人が愛でた日本の美しい四季が感じられる。思えば30年前、昭和天皇が亡くなられ、平成誕生の瞬間を体感したこちらとしては、再びその歴史的場面に立ち会えたことは感無量だ▼かつては、100歳近い高齢者を「明治、大正、昭和の三世代を生き抜き」などと称したが、昭和生まれにとって3つの時代を過ごすことになる。今後、どのような社会を築いていくかは、われわれ大人の責任だ▼さて慶事フィーバーは、しばらく続きそう。新元号にちなんだ商戦などにぎやかさを増す。もっとも最古の和歌集から出典となればいま一度、古典の世界を味わういい機会になるかもしれない。失われつつある日本人の精神性を考えたい。
片隅抄