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片隅抄

2019.06.01

旅行のガイドブックのページをめくり、地図を広げ、ホームページで生の情報を集める▼そうして準備万端、いつかは行ってみたいなと思っていた場所へ出かける。そこでどんなことがあるのか、旅の始まりはいつも心が打ち騒ぐ。現地へ行って初めて出くわすサプライズ―たとえば、丹後地方の舞鶴にある小さな店で「おおきに!」というネイティブの京都弁を初めて聞いたり―もたびたび。それも旅のだいご味だ▼今年は「奥の細道紀行330年」。松尾芭蕉が千住から奥の細道2400㌔の旅に出立したのは1689年、元禄2年のことだった。そのとき芭蕉は、日記に「ちぎれ雲が風に誘われていくようにさまよい歩きたい」と心境を記した▼同時に『行く春や鳥啼き魚の目は泪』という句を詠んだ。今とは違った命がけの旅の始まり、芭蕉はどんな思いだったのだろう。昨日から本紙で不定期の旅の連載を始めた。時には芭蕉と思いを共有しながら旅をしていきたい。

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