小学生の頃、通学路の途中に奇妙な建物を見た。平・丹後沢の入り口近くの山肌にへばりつくようにあり、その威容は秘密基地を思わせた。あの立地ながら、東日本大震災にも耐え現在もある▼のちにその建物で、「いわき民報陶芸教室」が開かれていたことを知った。昭和50年代から始まり、講師は陶芸家の故緑川宏樹さんだった。時代は流れ、緑川さんの没後10年の回顧展が18日から、平のギャラリー界隈、アートスペース・エリコーナで始まった▼陶芸に関してはまったく無知だが、酒器などには興味がある。前衛的な作風と称された作家だが、取材で見た作品には優しさ、温もりが感じられた。そのオープニングパーティーが同日夕、展示会場の一つで開かれた▼出席者の顔ぶれ、名前に覚えのある人たちが多いの驚いた。故人を懐かしむ各自のあいさつを聞き、その人柄が想像できた。「男の財は友」ともいうが、幅広い交友関係から魅力の一端がうかがえた。