毎週火曜日の紙面で「ヤマユリ分校」と呼ばれた小川小戸渡分校の物語を、当時の先生だった古山一郎さんの回顧録をひもとき、ノンフィクション小説ふうに連載している▼ヤマユリが結んだ昭和30年代当時の皇太子さま、美智子さまと電気も通わぬいわきの山間へき地にあった小さな分校の絆のエピソードは、これまでさまざまな形で紹介されてきたが、「あのとき、実はこんなエピソードがあったのだ」というディテールにこだわった紙面展開を試みている▼古山さんは88歳、教え子たちも70歳前後となり、当時をわが事として語れる人も多くはない。この紙面を通じて、散らばってしまったヤマユリの子どもたちの今を知りたいのだが、どうしているのだろう▼ヤマユリの白い花が咲く夏の夕暮れ、あの分校の校舎で同窓会を開くことはできないかと考えている。平駅のホームで皇太子さま、美智子さまと感動の対面をしてから来年で60年になる。恩師の米寿も祝って。
片隅抄