台所の片隅に、割れたままの小皿が残っている。この皿を見るたび胸が痛む▼今月は家庭内での暴行事件が続いている。7日朝には小名浜で27歳の息子が60歳の母親を殴る蹴るなどして入院先で死亡させ、24日朝には小川町で59歳の息子が80代の母親を竹刀でたたいたり顔を平手打ちするなどし、後に死亡した▼体調を崩している92歳の母親の世話を62歳の自分が親孝行のつもりで行っている。朝早く起き、あるいは仕事を切り上げて早々にその母の食事を作ることがある。食べることしか楽しみのない身、息子としては下手なりに献立を考えて調理する。しかしろくに箸(はし)をつけないことも多い▼ほとんど寝たきりでは食欲もわかないのだろう。でも息子としては「せっかく作ったのに…」と自分勝手に怒ってしまう。小皿はそのとき業を煮やし盛ったおかずごと割ってしまったものだ。あとで冷静になれば己の非に気づく。先の2人の息子に何があったのか。身につまされる。