昨年12月に公開された映画「サイレント・トーキョー」をDVDで見たが、なかなか示唆に富む内容だった▼舞台はクリスマスイブの東京だ。「戦争もやむなし」と言い切る首相に、本当の戦争の悲惨さを知る犯人がテレビ生放送での対談を要求する。それが受け入れられなければ午後6時に渋谷・ハチ公前付近に仕掛けた爆弾を爆発させるという▼首相は国民に自分の正義感をPRするように拒否し、渋谷には平和ボケした若者たちがイブにうかれ野次馬根性で次々と集まってばか騒ぎする。「爆発なんかするわけないしぃ~」。陽気に午後6時のカウントダウンを大合唱する。そして――▼爆弾を新型コロナウイルスに置き換えると、この国のコロナへの認知度のあまりの低さがよくわかる。多くの犠牲を払って感染防止に取り組む者とそうでない者がいる。自分はコロナに感染しない? みんなで集まって呑まないとストレスがたまる? そうでない者が理解できない。
片隅抄