ある商業施設の水産物コーナーを眺めていたら、カニが並んでいた。獲り立てなのだろうか、手足が動いていた。調理に自信がないので、買わずに通り過ぎた。作家三島由紀夫はカニが苦手で「蟹」の字を見るのも嫌がったという▼また芥川龍之介は「羊羹」の羹の字から、もじゃもじゃとした毛が伸びていく妄想にかられた。普段使う漢字だが、以前テレビである国文学者が「薦」を面倒で実用には不向きと話していた▼今ではパソコンのキーボードを叩けば簡単に変換されるが、いざ正確に記すとなると確かにややこしい。その字を使った「推薦」。投開票まで3カ月に迫った市長選を巡り、自民党いわき総支部はきのう新人、現職の計3人を支持という形で推薦を見送った▼党内事情から公正を期すためとする。市政スタート以来、保革対決の構図がいつの間にか現在の状況になって久しい。首長選は市民生活に直結する。まず投票率低下に歯止めをかけるのが急務。
片隅抄