先日、水上勉著『土を喰う日々』を一読した。幼少時、禅寺で奉公した著者が無駄をせず、素材を使い切る精進料理を作った体験をもとに四季ごとを12章に分け、調理法と時々の思い出をつづった本である▼読み進めるうち、3月の章では苦みのある山菜などが一品料理として登場し、思わず一献傾けたくなった。この原作が『土を喰らう十二カ月』の題名で今年11月に映画公開される。主演は沢田研二さんで、料理監修は土井善晴さんが務める▼水上作品については、来月から平のまちポレいわきで「特集・日本映画の黄金時代」と銘打ち、若尾文子さん出演の作品が上映される。第1回は水上の代表作『越前竹人形』。以降、原作は異なるが計5作を提供する▼監督も吉村公三郎、増村保造、川島雄三、小津安二郎、溝口健二といずれ劣らぬ巨匠がそろう。一般料金を気にせずとも、曜日によってサービスデーがある。8月以降も国内外の佳作が予定されている。
片隅抄