93歳の老母。高齢のうえ体の不調もあって食が細い。気が向いたときに庭の草むしりをするぐらいで、1日のほとんどを自室のベッドで臥せっている。話すこともほとんどない▼生きるというのは、健康で、仕事や趣味のような目標があって初めて〝生きがい〟を実感するのだろうが、悲しいかな、老母は、寝て起きて食事をしてまた寝るという〝お迎えを待ちながら生かされている〟日々を送っている。同居の愚息もさすがにそんな老母を不憫に思う▼だから、食が細くてもせめて3度の食事ぐらいは「おいしい」と食べてもらえるメニューを考える。「うまいから食べな」「食べね」「食わねえどダメだっぺ」――嫁ぎ先から介護に来る70歳の親孝行な賢姉と64歳の愚息の闘いの毎日である▼もちろん、無理に口に入れさせるようなことはしない。食べ残されても仕方ない。手を変え品を変え、箸の動き具合をみる。ほかのご家庭では、こんなときどう対処しているのだろう。