東北の風景には列車が似合う。今は無きムーンライトえちごに乗って、乗り継いだ羽越本線の車窓から眺めた日本海の景色は忘れられない。津軽三味線の演奏が聴ける五能線のリゾートしらかみに、八戸線で見た太平洋の記憶も色あせない。陸羽東線で宮城・鳴子温泉に何度も通った▼そうした列車の旅も、過去の話になるかもしれない。JR東日本は新たに、利用者が少ないローカル線として、35路線66区間の収支について公表し、昨年度もすべてで赤字だった。いわき市関係では、磐越東線いわき―小野新町駅間が該当し、赤字額は年間6億9千万円と示された。1日の平均乗客数は存廃を議論する基準を優に下回る▼いわき市はJR東日本を交え、県や沿線自治体の小野町などと、今後のあり方について協議を進める方針だ。春には夏井千本桜、秋には夏井川渓谷の紅葉を楽しむため、減速運転が実施されるほど自然豊かな区間。観光需要はまだまだ掘り起こせる。