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IAEA・グロッシ事務局長来市 地元首長・団体との意見交換に参加
来日中の国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は5日、東京電力福島第一原発の廃炉作業に関して、政府や東電、地元首長、農業・漁業団体などが意見交換する「廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会」に出席するため、平字一町目のいわきワシントンホテル椿山荘を訪れた。
福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、今夏にも予定される海洋放出。グロッシ氏は「私も皆さんの疑問や懸念を見聞きしている。こうして対面でお会いし、話ができることが何よりも大切だと思っている」と述べた。
冒頭のあいさつのみが公開され、「IAEAが伝えられることは、国際機関としての経験。皆さんの懸念を一度に解決する『魔法の杖』は持っていないが、IAEAは福島と共存していく。処理水の最後の一滴が安全に放出し終わるまで、IAEAはこの地にとどまる」と力強く語った。
意見交換は非公開で行われた。出席者のうち、県漁業協同組合連合会(県漁連)の野﨑哲会長は「事故を起こした原発であることを前提にしてほしい」と要請した。これに対して、グロッシ氏は「われわれも厳しい基準で評価している」と回答した。
IAEAが公表した「国際的な安全基準に合致していると結論付けた」とする包括報告書に関しては、野﨑会長は「評価そのものは真摯に受け止める」とした上で、廃炉の完遂を見届けると表明していることから、政府と東電は包み隠さずデータを提示していくべきと強調した。
福島評議会は今年2月以来の開催となり、グロッシ氏が来訪の前に、政府と東電から、原発処理水に関する対策や、福島第一原発の廃炉状況が示された。地元の首長として、内田市長はIAEAの包括報告書を踏まえ、「国際的な安全基準は満たしていると聞くが、安全と安心は違う。まだ理解醸成は途上と思うので、市民や漁業関係者のさらなる理解を図ってほしい」と呼びかけた。
また、福島第一原発1号機の原子炉圧力容器を支える筒状の鉄筋コンクリート製土台の安全性、情報発信のあり方、作業員の健康管理についても投げかけた。