「国際的な安全基準は満たしていると聞くが、安全と安心は違う。まだ理解醸成は途上と思うので、市民や漁業関係者のさらなる理解を図ってほしい」。5日に行われた「廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会」で、内田市長が政府や東電に投げかけた言葉だ▼福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水を巡り、今夏にも予定される海洋放出。国際原子力機関(IAEA)は「国際的な安全基準に合致していると結論付けた」とする包括報告書を公表した▼国際機関による〝お墨付き〟ももらった。しかし政府と東電が、県漁連と交わした「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」との約束はどうなるのか。彼らがなぜ反対しているのか、もう一度原点に立ち返るべきだろう▼安全だから大丈夫という理屈は分かる。しかし、このままでは約束を反故して、海洋放出に踏み切るとしか思えない。政府はその場しのぎでやり過ごす、そうした不信感がぬぐえない。
片隅抄