老朽化を背景に、8月中の解体に向けて調整が進められている、JR磐越東線・小川郷駅の木造駅舎。1915(大正4)年の開業以降、108年にも及び変わらぬ姿のまま、小川地区の玄関口として多くの人々に愛され続けてきた。最後の別れを前に、住民有志でつくる「小川郷(さと)の会」(草野充宏会長)は30日、小川出身の詩人草野心平も利用するなど、文学的価値も高い〝地域の宝〟に感謝の気持ちを伝えるためのイベントを催し、惜しみつつもしんみりとせず、にぎやかに「ありがとう」の言葉を伝えた。
死んだら死んだでいきてゆくのだ――。住民の多くが存続を望みながらも、解体されることが決まった趣ある木造平屋の駅舎の待合室に、蛙の詩人草野心平を代表する詩のひとつ、「ヤマカガシの腹の中から仲間に告げるゲリゲの言葉」の詩とメロディーが響き渡った。
印象的な一節は、解体を間近にした駅舎の姿と重なり、多くの住民の心に突き刺さった。当初は住民を挙げての〝お別れ会〟を予定していたが、「残念な思いで別れるのではなく、心平をはじめ多くの住民や利用者に癒しと温もりを与えてくれた駅に感謝の気持ちを伝える形で最後を迎えたい」と、駅舎の無人化以降、利用促進に向けて様々な環境整備活動に尽力してきた小川郷の会が中心となり、「ありがとう 小川郷駅」と題したイベントに変更した。
駅舎の前には、以前の活動で地元の子どもたちが作成した約200個の竹灯籠(とうろう)を「ありがとう(ハート)」の文字に並べ、駅舎前にはプラットホームへとつながる地下道に並べていた子どもたちの絵を飾った。
当日は、市青少年育成市民会議小川地区推進協議会(碇川秀一会長)が同会から志を受け継いだ「おがわ七夕まつり」も開催。600を超える、地域の子どもたちの願いが込められた短冊が飾られた8本の七夕飾りが周辺道路に登場したほか、住民たちがじゃんがら念仏踊りを披露し、駅舎の開業100周年を記念して作った歌「この町にうまれてよかった」が流された。
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