市立美術館で開催中の「古代エジプト美術館展」が人気を集めている。国内でもトップクラスのコレクションを所蔵する、同美術館渋谷の協力のもと、数々の歴史的遺物が紹介されている▼きのうは早くも入場者2万人を記録するなど、関心の高さがうかがえる。取材を兼ね2度足を運んだが、展示品は逸品ぞろい。惜しむらくは、こちらが浅学の身であり、時代区分や古代王などに理解が乏しいこと▼このうち、目を引いたのが全身が青緑色のヘカエムサエフのシャブティ像。紀元前664~332年頃の末期王朝時代の作とされ、薄暗いケースの中で深みのある光彩を放っていた▼市立美術館のパンフレットには「死後の労働から逃れるため、被葬者の代理として働くとされる小像」とある。古代権力者が庶民に強いた労働は苦役であったろう。現代では目先の儲けのため、平気で不正を行う企業がある。やむなく関わった人のため、小像の加護を求めたくなる。