中学生だったころ、母が老いて寝たきりになった祖母を自宅の一室で手厚く介護していたのを覚えている▼まだ老人ホームなどの介護施設は今ほど充実していなかった。自宅で最後まで看取るのが当たり前だったとはいえ、家事と農作業を一人でこなしながら認知症もあった祖母の面倒を見るのはさぞ大変だったことだろう▼その母が、先日、介護付き老人ホームに入所した。94歳。高齢のうえ病気もあって手足が不自由になり、もはや自宅では介護できなくなったからだ。少しずつ自分の意思を表現できなったが、自分を施設に入れる愚息を母はどう思っているだろう▼父のときもそうだったが、契約書の中に〝延命措置〟をとるかどうかの設問があった。父と同様、無理な措置はとらないで、自然に逝かせてほしいと記した。この判断はどうなのだろう。母に、「どうする?」とも聞けなかったし。明日にでも、好物のプリンをもって施設に様子を見に行ってみようと思う。
片隅抄