『ウルトラセブン』の名場面に最終回、ダンがアンヌに自分の正体を打ち明けるシーンがある。そのとき背景が一転銀色にキラキラ光り、向かい合う2人がシルエットになった▼昭和43年9月。特撮の円谷プロ制作とはいえ、まだCGもVFXもVP技術もなく、その感動的なシーンはくしゃくしゃにしたアルミホイルを貼り付けたものだと後になって知った。当時の製作スタッフの感性のなせる業といえるだろう▼昨年の大河ドラマ『どうする家康』では大掛かりな合戦シーンや昔の風景は特殊撮影が用いられたが、製作側の思惑が見え見えで、かえって安っぽく見えた。黒澤明監督やキャメラマン木村大作らシーンにこだわった名人たちの意見を聞きたいところだ▼『サンダーバード』も映画のCG版よりオリジナルの人形劇のほうが印象深かったのはわたしだけか。特撮といえばハリウッド映画が知られるが、見た目だけはなく、日本人がもつ感性を大事にしてほしい。
片隅抄