1915(大正4)年に開業し、小川出身の詩人草野心平をはじめ、心平を慕う詩人で哲学者の串田孫一などの文人たちが利用した往時の姿そのままを残していた、JR磐越東線の小川郷駅の駅舎が、住民たちに惜しまれながら解体された。
木造平屋建ての駅舎は百年以上変わらぬ姿のまま、小川地区の玄関口として多くの人々に愛され、文化遺産としての価値が見直されていることから保存を望む声が多かったが、JR東日本は老朽化を背景に維持・管理上の問題から建て替えを決断。昨秋から着工し、昨年12月には小川地区行政嘱託員(区長)連絡協議会、小川地域振興協議会、小川郷(さと)の会の関係者などに進捗状況を説明したという。
住民たちによる「木造駅舎の風合いや心平を感じさせる、蛙を用いたデザインにしてほしい」との要望に対し、同社は屋根を心平の作品の中に用いられた「群青色」にする方向で調整をしていることを明らかにしたが、延床面積は当初の発表通り、木造駅舎の約6分の1(約30平方m)のまま。
その場で資料などは提示せず、後に工事現場に駅舎の完成イラストを飾る対応に、憤りを感じる住民もいたといい、小川郷の会会長の草野充宏さんは「地下道に飾っていた心平の詩『故郷の入り口』=心平が1942(昭和17)年10月、中国・南京から一時帰省し、小川郷駅に到着した際の情景を描いた=のパネルだけでも飾ってほしいと相談はしたが……」と寂しそうに話していた。
新たな駅舎は春ごろの完成が見込まれている。
イラストは、小川郷駅の新駅舎の完成予想。