遠野町地域おこし協力隊として、伝統の「遠野和紙」の技術継承に努める傍ら、書家としても活動する高嶋祥太さん(38)=同町入遠野=が自ら漉(す)いた遠野和紙に、27歳で早世した同町出身の歌人田部君子の短歌をしたためた色紙額や和紙あかりが、市勿来関文学歴史館に飾られ、来館者の注目を集めている。
3月いっぱいで同隊の任期が満了し、同地に腰を据えて遠野和紙の魅力を発信する事業を起こす予定で、「協力隊の集大成。遠野和紙とともに田部君子の魅力を伝える機会になれば」と来場を呼び掛けている。
高嶋さんは山形県東根市出身で、2021(令和3)年4月に同協力隊に着任後、最後の遠野和紙=当時の名称はいわき遠野和紙=職人・瀬谷安雄さん=2014(平成26)年没、享年89=の跡を継ぎ、歴代の協力隊員が継承してきた和紙製作に携わった。
さまざまな活動を進める中、市勿来関文歴史館で2021年9~11月に開催した企画展「田部君子―清きほこりを高くかかぐる―」で田部君子の存在を知り、瑞々しくも才気あふれる短歌にひかれた。
「素朴ながら、力強い歌が心に響いた」と高嶋さん。地元でも田部君子の存在自体を知らない市民が多いことから、どうにかして、その生きざまを含め、短歌の魅力をいつか発信できないかと、心の奥底に思いを隠していたという。
日展で活躍し、ふるさと東根市の初代名誉市民ともなった書家、故植松弘祥氏に師事し、協力隊員着任後に遠野で書道教室を主宰する書家としての顔も持ち合わせている。このたび協力隊員としての任期を全うするにあたり、自ら漉いた和紙に田部君子の短歌をしたためた作品をつくることを発案。同保存会、同館の理解と協力を得、作品展を開催することが決まった。
3月10日まで。開催時間は午前9時~午後5時(最終入場は同4時半まで)。
(写真:田部君子の短歌をしたためた高嶋さん自作の遠野和紙あかり)
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