ふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」は4日、小名浜港で採取したクラゲが、コノハクラゲ属の新種だったと発表した。和名は小気味よく泳ぐ姿から、いわき地方の伝統芸能・じゃんがら念仏踊りをモチーフに「ジャンガラコノハクラゲ」と命名したほか、学名は「Eutima onahamaensis(エウティマ・オナハマエンシス)」で、産地の小名浜を付けている。生体は同館2階「ふくしまの海」で見ることができ、さっそく来館者の目を引いている。
新種のクラゲは2022(令和4)年6月、同館すぐそばで取られ、黒潮生物研究所(高知県大月町)との共同研究で新種と結論付けた。両者による論文は、2日付でスイスの学術誌「ハイドロバイオロジー」に掲載された。
ジャンガラコノハクラゲは、傘の直径が4~8mmほど。ガラスのように透き通った傘に、触手の一部が茶色や赤色で、論文では「非常に美しいクラゲ」と紹介している。
発見のきっかけは20年ほど前にさかのぼる。同館によると、日本沿岸では2種のコノハクラゲ属が知られているが、同館がこれらと異なる謎のクラゲを小名浜港で見つけた。しかし当時は正体が分からず。あらためて2年前に同研究所に持ち込み、標本の形態観察やDNA分析などを進め、新種であると突き止めた。
論文の基になったクラゲを採取し、執筆者に名を連ねる同館主任技師の石井輪太郎さん(39)は「小名浜で見つかり、いわきにゆかりのある名前が付けられて良かった。新種のクラゲを通じ、多くの方の関心をひきつけられれば」と話す。
4日は12個体が展示されていたが、状態によっては中止の場合もあるという。石井さんによると、一般的なクラゲの形になる前の「ポリプ」は未発見で、今後も調査を継続する。さらなる解明とともに、繁殖にもつなげていきたい考えだ。
(写真:ジャンガラコノハクラゲと命名された新種=アクアマリンふくしま提供)
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