27日に四倉で開催される「四倉ねぶたといわきおどりの夕べ」(四倉夏まつり実行委員会主催)。5年ぶりに街中でのねぶた巡行が決まる中、大ねぶたを担当する制作団体「善友会」(戸田陽一郎会長)は、正式に決定する前、5月下旬から道の駅よつくら港に隣接するねぶた工房で作業を進めてきた。
復活の喜びをかみしめるとともに、中学生の有志が作業に参加するという明るい話題も。作り手の高齢化が懸念される中、四倉では着実に伝統行事の担い手が育ち始めている。
祭りの目玉となる大ねぶたを担当するのは善友会で、コロナ禍で中止を余儀なくされてきたため、同会が「四倉ねぶた」の新作を手掛けるのは、2019(令和元)年以来、実に5年ぶりだ。本体の高さは約3m、幅は5㍍、奥行きは3・5m、台車を入れると高さは4mほどになり、ひと際、来場者たちの注目を集める。
会員たちは平日の夜と週末の午前中に工房に集まり作業に没頭しているが、ベテランの会員たちに、10代の姿がちらほら混ざる。副会長の小湊剛さん(48)の長男で、四倉中2年の琉誠(りゅうせい)さん(14)と、同級生の戸田樹(13)、及川凌央(13)、斉藤凌(13)さんの4人。
琉誠さんは祖父の故・辰夫さんも同会でねぶた制作に取り組んでいたといい、親子3代の〝ねぶた一家〟に生まれ育ち、自然と父の背中を追ったが、ほかの3人は琉誠さんの活動を知り、興味が沸いて今年初参加。
部活動などで全員がそろう日は少ないものの、日曜日の午前中に工房へ足を運び、先輩に教わりつつ骨組みに和紙を貼り付けたり、輪郭からはみ出さないよう色を塗る作業などに挑んでいる。
郷土芸能や伝統行事の現場では、高齢化に伴う担い手不足がさけばれており、善友会が技術指導し、祭りの中で巨大ねぶた、ねぷたが披露されてきた須賀川市長沼地方の「長沼まつり」は少子高齢化を背景にした後継者不足などから、今年9月の開催を最後に38年の歴史に幕を下ろすという。
これにより、ねぶたが巡行するのは福島県では四倉のみに。伝統を絶やさないためにも、若者たちの参加は会員たちを勇気づけている。
(写真1枚目:大ねぶたの制作に取り組んでいる善友会の会員ら 2枚目:墨入れをする小湊琉誠さん)