失職から出直し知事選に臨んだ過去の事例を遡ると、「脱ダム」宣言を打ち出し、議会と対立した長野県の田中康夫知事(当時)が思い出される▼多額の補修費用などを要すコンクリートのダムは造るべきではない、などといった主張から旧態依然とした議会批判を強め、無党派層の支持を得て再選する。ガラス張りの知事室は話題となった▼ただ、内部告発に伴う「トップの資質」を問う知事選は今回が初めて。当初はパワハラ、おねだり疑惑のみに焦点があたり、就任後の実績については話題にすら上らず、SNSを中心に報道姿勢への批判が高まった。選挙では疑惑は〝ねつ造〟、当選後は「オールドメディアの敗北」のワードが飛び交う事態に▼田中氏は再選後、議会との溝を埋められず、06年の知事選で敗退した。議会に加え、県職員とも対立が生まれた斎藤元彦氏は、この混乱をどう収めていくのか。そして既存メディアはどう報道していくか。注目は尽きない。