仕事柄、県外へ出ると地元の新聞を買い求めることにしている。どんな紙面展開をしているのか参考にするためだが、栃木県に行った折は下野新聞を手に入れた▼さらにこのときは、市立図書館にも足を延ばして昭和46年から48年までの下野新聞のバックナンバーを見せてもらった。後に『昭和の怪物』と言われた、当時作新学院のエース江川卓投手の快挙を、地元新聞がどれくらいセンセーショナルに報道したのか、興味があったからだ▼江川投手の夏の甲子園予選に限っていえば、1年生で完全試合を達成。2年生では初戦ノーヒットノーラン、2戦目が完全試合、3戦目がまたノーヒットノーラン、敗れた準決勝も10回2死まで無安打だった。3年生では全5試合で被安打2、うち3試合がノーヒットノーランという成績だ▼だが、紙面をめくると意外なほど写真も見出しも小さな扱いだった。だから全国的にも知られていなかった。江川投手は謎多き怪物だったのだ。