明治時代、レンガ造りのモダンな佇まいで石城郡平町(現・いわき市平)中心市街地のシンボルだった旧平銀行。その屋根の上に鎮座していた尖塔が、装いも新たに大國魂神社(山名隆弘宮司)=平菅波=の境内に移築された。
夕方になると自動点灯するようリニューアルしており、「温故知新之燈(ともしび)」との名称で新たな命を吹き込まれた。11月22日には、移築・修繕工事に貢献した北関東空調工業(平字柳町)代表取締役の有賀行秀さんに同神社から感謝状が贈られた。
平銀行は1896(明治29)年11月、現在の平字二町目地内に開業。戦後景気や炭鉱産業の発展とともに需要を伸ばし、1915(大正4)年には二町目の角地に洋風レンガ造りの新店舗を開設した。
その後、昭和の金融恐慌で休業に追い込まれ、1929(昭和4)年、茨城県水戸市に本社を置く常磐(ときわ)銀行(後の常陽銀行)に吸収合併された。
明治時代の趣きを残す旧平銀行の建物。屋根の上の尖塔は避雷針の役割も兼ねていた。建物はしばらく常陽銀行平支店として使用されたものの、1974年の改築工事に伴い解体された。
解体工事の際、大國魂神社で建物の尖塔部分のみを譲り受けた。長らく山名家の庭先に保管されていたが、東日本大震災後に始まった自宅の改築工事に伴い、有賀さんの祖父と曽祖父がかつて旧平銀行に勤めていた縁から、有賀さん宅に一時的に移築していた。
その後、有賀さんが同神社とも交流の深い坂喜建築(平上大越)に頼んで修繕を加えた上で、今年7月、神社のシンボル的存在として境内に再興したという。
雨風にさらされて傷みが激しかった木造部分を張り替え、銅板だった屋根をアクリル塗装に。なかに照明を入れてライトアップできるようにした。屋根の色は銅板に生じた緑青の色に由来している。
神社では月に1度、マルシェを開催するなど地域住民たちの新しい交流の場となっており、「新しいシンボルとして親しんでもらいたい」と祢宜の山名隆史さん。
有賀さんは神社関係者とともに「移管場所が定まり、うれしい。ほっとした気持ちです」とあらためて完成を喜んだ。尖塔は暗くなると自動点灯するようになっており、冬期はおおむね午後4時すぎから7時ごろまで明かりがともされる。
(写真:大國魂神社に移築された尖塔)
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旧平銀行の尖塔 大國魂神社に修繕・移築 明治時代の息吹きが新たな形に






