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94歳の常磐・渡辺矩仁男さん 精巧なメジロかご製作 幼少の思い出を胸に
昭和レトロな「メジロかご」はいかが――。常磐上湯長谷町の渡辺矩仁男さん(94)が作る精巧な竹製のメジロかごが、昭和の時代を懐かしむアイテムとして話題だ。
現在放送中のNHKの連続テレビ小説「ばけばけ」のなかで、小泉八雲が彼を慕う女性から竹製の鳥かごを贈られ、巷では中の鳥が「ウグイス」か「メジロ」かの論争が起こったのも記憶に新しい。渡辺さんは91歳の時、昔を思い出しながら作りはじめ、今年は10個ほどを制作した。「長生きのコツはクヨクヨせず毎日を楽しむこと」という渡辺さんの『アトリエ』は、こだわりの道具と鳥の模型でいっぱいだ。
渡辺さんは1931(昭和6)年、愛知県名古屋市生まれ。父が若くして亡くなり、母の実家の静岡県湖西市に転居した。そのころの遊びは近所の親せきの庭に生えていた竹を切り出し、竹細工を作ること。釘をあぶり、叩いて作った手製の道具で竹とんぼなど様々なおもちゃを作った。
そんな渡辺さんが高等小学校の夏休みの宿題として作ったしたのが「メジロかご」。現在は法律で禁止されているが、当時は子どもたちの間で『メジロ捕り』が流行。渡辺さんも友人とトリモチの皮を叩いたもちのようなもので罠(わな)を手づくりしたことがあるという。
いわき電子(現FDK)に就職し、長くコンピューターのコアメモリの製造に従事。退職後は「仕事でコンピューターを作ってきたが、あまり使ってはこなかった」とパソコン教室に通い、ワード・エクセルを修得した。
「メジロかご」づくりは市老人クラブ連合会が主催する「シルバーフェア2023創作展」に出品するために91歳の時、少年時代を思い出しつつ作ったもの。それが、工芸の部で初めての「ゴールド賞」を受賞した。
メジロかごの素材には真竹(マダケ)を使う。山から切り出して乾燥させた竹を割って、削って竹ひごを作る。材料の調達、設計から組み立てまで一人で行っている。パソコンで等間隔に目印を打ったテープを印刷して使うのが『ミソ』で、これがあれば竹ひごを等間隔に配置できる。昔ながらの道具と創意工夫で丹念に仕上げている。
「作っている間は無我夢中で、気になると夜中に起きて細部を直したりするんだよ」と笑う渡辺さん。今年は12月、NPO法人はなのころが主催する障がい者支援のためのチャリティーアート展に出品するために集中的に作品を作ったため、いまはちょっと作業を「お休み中」だという。決して無理せず、朗らかに、日々を輝かせている。
(写真:渡辺さんと紙ねんどで作った野鳥)