「雪が降るとあの日を思い出す」、最近そんな会話を耳にした。寒さに、物もなく震えていた震災直後の記憶が蘇る▼各機関・団体が、震災から1年の追悼行事の準備を進めている。家族を失った人の中には、1周忌を機に気持ちの切り替えを考えている人もいるだろう▼「三年寝太郎」という民話がある。3年間、寝てばかりで、怠け者と見られていた太郎が、村が干ばつに襲われた時に突然起き出し、巨石を動かし川の流れを変え、村に水を呼び込み危機を救った、という話だ。伝承の1つでは、太郎の寝続けていた理由が「母を亡くし何をする気も失ってしまったから」となっている▼悲しみが癒えるのに3年掛かったのだ。大切な人との死別とはそういうことだ。1周忌を前に、なお悲しみや後悔にかられている方々へ…無理をしないで、ゆっくりと心の平安を取り戻してください。悲しみはいつかきっと、力に変わります。起き上がった太郎が村を救ったように。
片隅抄