沿岸部で津波に襲われて大切な人や家財を失った人、4・11の大規模土砂災害で心身に大きな傷手を負った人、原発事故の放射線禍から逃れて自宅に帰れないでいる人、放射線被害と風評被害で仕事を奪われた人▼その一方で、幸い家も家族も仕事も以前と変わらずにこの1年を過ごすことができた人たちもいる。幸不幸の受け止め方は人それぞれなのだろうが、いずれにせよ、さまざまな境遇に置かれた人たちがいて今のいわき市がある▼支援に訪れた人たちはよく言ったものだ。「励ますつもりが、逆に被災地の人から元気をもらったよ」と。安っぽいセリフだと思う。笑顔をつくって冗談を言っても、本当はこれから先どうなるか、見えない将来にみな不安を抱えて泣きたいくらいなのだ▼あすで震災1年。2年目はどんな年になるのだろう。やせ我慢、結構! 手探りでも、とにかく前に進まなければ事態は改まらない。いわき市を挙げて難局に立ち向かっていこう。
片隅抄