春の選抜高校野球もいよいよ大詰めに入ったが、センバツというと忘れられないシーンがある▼84年の第56回大会。PL学園と都城の準決勝は0―0のまま延長11回裏を迎えていた。PLの攻撃も2死1塁。桑田の打球は平凡な右飛となり誰もがチェンジと思ったが、都城の右翼手がまさかの落球。全力疾走していた走者が一気に生還し、PLがサヨナラ勝ちした▼スポーツは時として、選手に大きな試練を与える。周囲はこう言って慰める。「ミスは誰だってするさ。気にするな、次にまた頑張ればいい」と。確かにそうなのだが、問題はミスした本人が自分でどう気持ちの整理をつけられるかだから難しい▼最近あったある試合のエラーのことが気になっている。その選手は立ち直っているだろうか。仲間への申し訳なさに落ち込んだだろうが、それをばん回するには自分で立ち上がってまた挑戦するしかない。逃げるな。試練を乗り越えれば、人間的に成長するはずだ。