秋の夜長を1人静かに読書―という人へ、被災地たるいわきの人々に、生きる術を示してくれそうな1冊がある。近年ブームの新書から、心理学者諸富祥彦著『人生を半分あきらめて生きる』だ▼「人生は小さなあきらめの積み重ね」とし、どうにもならないことを、上手にあきらめていく大切さを説いている。頑張ることよりあきらめる方がつらいこともあるが、そんな時でも何が何でも頑張ろうとするのではなく、少しはあきらめてもいいんだと思うようにすればホッとできる―という▼すると、自己否定の念から解放され、再び心に力がわいてくるというのだ。何が起こるか分からない人生の中で大切なのは、現在を一生懸命生きることで、長期的な目標を持つより「まず1年、次にもう1年」と、今を本気で生きていくことだという▼また、あきらめることは、物事を明らかに見ることとも。あきらめきれぬものを抱えた被災者の心が少しでも和らげばと願い、紹介まで。