「お遍路が一列に行く虹の中」(風天)。故渥美清さんの詠んだ句である。風天とは、主演のヒット映画『男はつらいよ』の主人公車寅次郎を称する〝フーテン〟からの俳号だろう▼一昨日の午後、雨上がりの東の空に虹が出現した。その時分、支社に居たのだが同僚に知らされ、外に出てみると大きな半円を描く二重の色の輪が目に飛び込んできた。やや色の薄い外側に比べ、内側にある虹は強烈な光彩を放っていた▼同僚が早速写真に撮り、福島地方気象台に問い合わせたところ「副虹」と分かり、8日付本紙1面に掲載された。虹の左端をよく見ると、支社からそう遠くない場所から発生していたように思う▼そのまま歩いて行けば、虹にたどり着けるような感覚になり、ふと先の句が思い出された。先日の団体旅行で一緒だった知人が急逝し、この日がお通夜。旅行では寅さんの舞台、葛飾柴又にも訪れたばかりだった。在りし日の姿と虹が悲しく重なった。