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片隅抄

2013.01.18

先日、80歳で亡くなった映画監督の大島渚さん。元気に活躍したころを知っているだけに後年病に倒れ、夫人の介護のもと、リハビリに励む姿が痛々しかった▼随分前になるが、いわき市内の高校生を対象にした弁論大会が市文化センターで開かれたことがある。地元企業の主催で十数人が発表したと思う。なぜか自分も出ることになり、拙い弁論を行った▼当日のゲストに招かれたのが大島監督。話題作「愛のコリーダ」から3年たち、時期的には次回作「戦場のメリークリスマス」までの構想期間ではなかったろうか。出場者全員の発表が終わり、監督の講演になった。開口一番の言葉が印象にある▼はっきりとした口調で「皆さんの発表を聞いたが、残念ながら私の魂を揺さぶるものはなかった」。高校生相手である。普通なら社交辞令的な講評をするだろうが、一級の表現者にそのような妥協はよしとせずだったか。訃報に接し、当時の情景が重なった。

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