「考え苦悩することは人間だけの行為」―ある講演の中で語られた言葉だ。そして「苦悩の中で自分の弱さを自覚すると、行動が繊細になり、困難に最良の方法で対処できるようになる」と続いた▼自分を知れば対処法も見えてくるということか。かつてどこかで聞いた「みんな悩んで大きくなった」が頭をよぎった。しかし、すべての人がそうとは言えまい。苦悩の先に光を見いだせず自分を見失うこともあるだろう▼市が行っているゲートキーパー(命の門番)の養成に関して取材した。ゲートキーパーは、自殺を考えている人のサインにいち早く気付き、声を掛け耳を傾け、適切な専門家へつなぐ役割をする人。いわきでもこの養成講座が20年度から実施されている▼民生・児童委員や市役所の窓口職員などを中心にこれまで590人が受講している。そうした人々が、1人でも多くの悩める人を救えたら―そんな社会の結び付きこそが、人間の幸せへの道標でもある。
片隅抄