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片隅抄

2014.01.27

頭では分かっていても、抑えがたいやるせなさを味わった。昨年暮れに着工した薄磯地区の震災復興土地区画整理事業現場の風景だ▼工事の第一歩は、津波で流出した家屋の基礎撤去。今、その作業の真っただ中にある。掘り起こされた基礎があちこちに広がっているさまに「これで本当にかつての姿は、跡形もなくなくなるのだ」という寂寥感がつのった▼基礎があれば、かつての自宅周辺の思い出をたどれた人もいたろう。しかし、それもこれで本当に終わり。すべての人が前を向いて生きていけるわけではない。特に何十年もその土地で慣れ親しんできた高齢者の心中を思う時、やはり胸が詰まる▼これから同地区には、沿岸を守る防災緑地の内側に、より安全・安心を期したまちがつくられていく。ならば、とうとう基礎までがなくなったことを最後の悲しみとし、古いまちの記憶を心の奥にとどめつつも、新しい故郷の創生に希望を託し、生きていかねばなるまい。

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