「春遅い北国に桜の到来を告げるのはいわき市から」――毎年春、東北地方以北では最初に桜の開花を発表する目安となる標本木のソメイヨシノが小名浜にあったことが、市民の1人としてうれしかった▼標本木ははじめ、小名浜港を見下ろす桜の名所・富ケ浦公園にあり、その後、旧小名浜測候所敷地内のソメイヨシノに移された。科学が発達した現代にあってなお、春の訪れを測候所の職員の目で判断していたのである▼先日の本紙記事で、同測候所が無人・機械化されて以降、敷地内に立ち入りできない状態で、放置された桜が病に侵されていることを知って残念に思った。専門の職員がいないのなら、市民が桜を手入れしながら、開花発表の任を引き継ぐのが最良であろう。季節感あふれる大切な役目であるのだ▼現場がどういう状態か、地元の人たちがどんな気持ちでいるか実態をよく調べず、杓子定規に「防犯上、立ち入りを禁ず」とはいかにもお役所的発想だ。