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片隅抄

2010.12.11

 いわき総合図書館で今、「いわき郷土研究の先駆者・諸根樟一と三猿文庫」が開かれている。諸根は沼部町出身。在野の郷土史家として『磐城文化史』などを残している▼しかしここでは彼のひとり娘慶子のことを触れておきたい。「山脈にきはまるところ雲いでで村のはづれは川に続くも」。慶子19歳の時の短歌が、歌碑として父の生家近くにひっそり立っている▼生まれたのは平。父の仕事の関係で幼稚園児のとき東京に移り、中学・高校時代は文学に才能を発揮した。先の歌は、戦時色が濃くなる昭和18年夏、日本女子大在学中に体調を崩して帰郷するも学徒動員に応ずるため1カ月後に帰京するときに詠んだ歌である。慶子は25歳のとき、結核性肋、腹膜炎で亡くなった▼来年8月、県内で高校文化部のインターハイともいうべき「高校総合文化祭」が開かれる。いわき市は、慶子が愛した〝文芸〟の会場となる。この機会に、彼女の歌集をひもとくことを薦めたい。

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