このところの民放のテレビを見ていると、東日本大震災や東京電力の原発事故が、まるでなかったかのような錯覚に陥る▼特番といえばお笑い芸人と、女性タレントとのたわいないトークの応酬。いつまでも震災や原発事故でもないとでもいいたいのだろう。ただ、放射能汚染にかぎっては、福島だけの問題と簡単に考えていると、とんでもないことになる。なぜなら日本には福島と同じような原発が点在しているからだ。いつ自分の足元で原発事故が起きないとも限らない▼事故の処理だけを言えば、自分たちの世代もそうだが、子や孫のことを思い、しっかりとした対策を講じなければ、将来に対し禍根を残すことになる▼お隣の双葉町に行くと、町の入り口に「原子力 明るい未来のエネルギー」と書かれたアーケードがある。自分たちの住む場所が放射能に汚染され、帰るに帰れないでいる人たちにとって明るい未来とは、どんな未来なのか。きょうは原子力の日。
片隅抄