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片隅抄

2011.10.29

 東日本大震災で甚大な被害を受けた平豊間字塩屋町に小さなお堂がある。地元では「阿弥陀堂」の愛称で呼ばれ、毎月1日には近くのご婦人たちが集まって、念仏を唱えながら大きな数珠を回す〝数珠繰り〟が行われていた▼この阿弥陀堂、大きく傾きはしたものの、今回の大津波に耐えた。海岸とお堂の間に家屋があったこと、平成14年に38年ぶりに新築したばかりだったことが幸いしたらしい▼「漁をしていたら網に阿弥陀仏がひっかかった」のが由来とされ、4畳半ほどの内部にはその阿弥陀様が祭られ、古い木箱の中に保管された大小2本の数珠と木札も無事だった。箱には明和6(1769)年と書かれている。242年もの間、豊間に伝えられてきたものらしい▼今年も3月1日にお年寄り4、5人が集まって数珠繰りをした。年々参加者が減り、高齢化して存続が危ぶまれているが、その大元になる数珠が残ったことで、伝統は辛うじて守られた形となった。

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