10年以上前、スパリゾート・ハワイアンズ内に完成した大規模露天風呂「与市」のオープン式典に出席した。式次第後、江戸時代の湯屋を思わせるそば処で招待された若手落語家と話したことがある▼「立川一門でして。師匠は談志です」。芸名は失念してしまったが、小話を披露したと記憶する。落語には浅学の身だが、先日亡くなった談志さんの高座だけは一度生で聞いてみたかった。都内の知人は数年前、運良くチケットを入手し師匠の芸にふれたという▼芸に厳しいことは言うまでもなく、その生き方は破天荒、狂気、毒舌などさまざまな異名を取った。さぞ同業者には煙たい存在だったと思う。半面、若手の育成にも心血を注いだ。先の若手も名の通った落語家になっているかもしれない▼弟子の立川ぜん馬師匠が定期的に出演する常磐湯本町の「おんせん寄席」。果たして亡師の思い出を語るだろうか。傑出した芸人である。枕程度でも興味は尽きない。
片隅抄