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片隅抄

2011.12.16

冬場の悩みにひび割れがある。今年は両足のかかとに加え、右手人さしと親指の先にも亀裂が走り、シクシクと痛む。季節が変わり傷が癒えても、この時期が来ると確実に発症する▼東日本大震災から9カ月がすぎた。あれから毎月11日が来るたび「今日で何カ月目だ」と市民の口端にのぼる。平穏な日常生活を激変させた「暗い春」は、まだ一巡していないのだ▼発生当日の大混乱から予期せぬ津波、さらに原発事故に伴う避難と物資不足。多くの人が家を失い、命を落としたほか、放射性物質が影響する健康問題などが今に続き、われわれの心身に深いダメージを残している▼師走に入り、夜の繁華街はにぎやかだ。ある飲食業者の話では昨年並みか、それ以上の宴会件数があるという。つらい記憶は一時でも忘れ、気分転換を図るということか。不快な指の痛みを気にしながら、うす寒く曇り空だった「3・11」が近づくのを感じる。容易に消せない負の記憶だ。

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