「カメダ…」。ある殺人事件をめぐり、2人の男が交わした言葉を糸口に執念の捜査を続ける刑事。松本清張『砂の器』の冒頭でこの会話シーンが登場する▼原作では最初に秋田県「羽後亀田」を犯罪にかかわる場所としている。犯人は刑事が赴くことを想定したように、事件と無関係の人間を現地に送り、あえて人目にふれる行動を取らせる。読み進めるうち、巧妙なアリバイ工作と気づく▼小説との対比とはいえ、目立つことを極端に恐れ、17年間の逃亡生活の果てに逮捕されたオウム真理教元信者。公開された女性の写真は、当時と似つかぬ顔立ちだった。同じ特別手配中の男もそうだが、隣人であっても確認するには困難と思われた▼地下鉄サリン事件にとどまらず、多くの凶悪犯罪を実行した宗教団体。いわき市でも首謀者の子どもの移住、ある町の建物買収関与など暗い影をおよぼした。8日現在、残る1人が逃走を続けているが。早急の逮捕が待たれる。