「裸の島」などの映画で知られる新藤兼人監督が先日亡くなった。国内外で数々の賞を受賞し、国内最高齢監督として48本の映画を世に送り出した▼新藤監督は優れた映像作家と同時に、名脚本家としても名をなした人でもある。その数233本。監督は先の大戦で召集され、戦死を覚悟したという経験を持つだけに、反戦、反核に対しての思い入れが深く、それをテーマにした作品も多い▼昭和46年、新藤監督脚本で映画化された「沖縄決戦」もそんな1つ。ひめゆり部隊の悲惨な最期でも知られる沖縄戦。15万人余の県民らが犠牲になる熾烈な戦いが描かれ、今も語り継がれる反戦映画だ。以後、沖縄は米軍の基地の町として今も戦争のつめ跡を深く残している▼沖縄県民にとって、不戦と平和の誓いを新たにする「沖縄慰霊の日」(6月23日)が今年もやってくる。この日、野田首相は基地問題についてどんな考えを示すのか、天国の新藤監督も注目していることだろう。
片隅抄