新米記者のころ、先輩に言われた。まずきちんと話を聞け。そうすればきちんと書ける―至極当然だが、一番大事でもある▼インタビュアー経験豊富な阿川佐和子の著書『聞く力』を読んだ。副題は〝心を開く35のヒント〟。うち深く共感したのが「質問の柱は3本」「段取りを完全に決めない」「先入観にとらわれない」。何を聞くかを押さえてから取材しないと記事は書けない。が、そのポイントが当方の思い込みのこともあるのだ▼また思うに、聞き上手な人の前ではつい本音を吐露したくなるもの。阿川氏いわく「自分の話を聞いてほしくない人はない」。聞かれる側になれば自身もそうだし、聞く側としてそうありたいところだ▼そのために必要なのは「なぜ話を聞きたいかを納得してもらってから聞く」ことだろう。取材では、相手が語りにくいことを聞かざるを得ない場合もある。それでもきちんと語ってもらい、きちんと聞くにはこれが不可欠だと思っている。