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片隅抄

2012.08.06

平の街には七夕のささ飾りが揺れ、連日の暑さの中、伝統の祭りの風情にしばし心が和らぐ。そして明日7日は立秋、1週間後には月遅れのお盆に入る▼季節の移ろいを感じ、開いた歳時記の中の一句に目が留まった。「潮さゐのしづかにとどき霊まつり」(木津柳芽)―海で亡くなった人を悼むかのように聞こえてくる潮騒の音―いわきに在り、海を前にして触れた句に、ひとしおの感慨を抱く▼多くの恵みをもたらしてくれた海が、私たちに牙をむいてから1年5カ月。市内の震災犠牲者のうち、いまだ37人が行方不明、いわき七浜からはるかに広がる海に眠っているだろうことを思わない日はない▼2度目のお盆を前に、せめて魂だけは迷わず家族のもとへ返ってきてほしいと祈りつつ、海の前に立った先週半ばの満月の夜。波間に映える月明かりの美しさに息をのんだ。まさに絶景というにふさわしい。寄せる波の下に眠る魂へ思いと、自然への畏怖の思いが交錯した。

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