師走も近づき、人に会えばまず「今年はどうでした?来年はどうでしょうね?」となる。その際「震災の影響は悪ばかりではなかった」という話を各所で聞く▼震災で個人の意識や社会の仕組みに変化や見直しが生まれ、業務や活動に伸展が見られる―というケースだ。『思考の整理学』の著者外山滋比古氏は、「万事マイナス先行がよい」と説く。マイナスでスタートすれば、それに負けまいとするプラス力がわき、結果、良い方向に行くとする。当地において、進まぬ復興の現実は承知しているが、それをさておいても、震災の痛手をプラスに転じていく時がきているのだと思う▼外山氏は、忘却の必要性も説く。「自分の頭で考え、次に進むには、記憶を整理し、その幾つかを忘れていくことが大事」だと▼自身も震災で得た出会いや恩は忘れ得ぬ思い出となったが、当時の不安など負の記憶は確かに薄れている。先へ向かうにはそれでいい、そうすべきだと考えている。