日本では8月15日が終戦記念日だが、終戦の日は国により違う。ドイツは連合国軍に無条件降伏した5月8日としているし、米仏は日本が降伏文書に調印した9月2日を対日戦勝記念日と呼ぶ▼日本にとっても、15日ですべてが終わったわけではない。そこから苦難が始まった人々も多数いる。ソ連が、旧満州にいた日本軍のシベリア抑留を決定したのは8月23日。60万人が激寒の地で強制労働をさせられ、10年以上に及んだ人もいる▼かつて平在住の抑留体験者に話を聞いた。その1人は、復員の際に、抑留の証しとして現地の松の種を足の指の間に隠し挟んで帰国した。見つかれば、シベリアに戻されることを覚悟しての行動だ。種は自宅庭にまかれ、今や大木となった▼その松を見上げ、一度戦争になれば戦いが終われど、なかなか平和が戻らないことをあらためて痛感した。命がけで持ち帰ったシベリア松に込められた思いを、未来永劫伝え続けていかねばなるまい。