「近ごろの若いお母さんの中には、自分の子どものためにお昼のお弁当を作る人が少ないんですよ」と、ある幼稚園の経営者が苦笑いしながら話した▼幼稚園児の母親であるならば、20代後半から30代前半あたりか。しかし、これは年が若いからどうこうという問題ではない。小中学校は給食がある。では、高校生をもつ親はどうだろう▼家庭で弁当を作る時間がなければ、コンビニか弁当屋さん、スーパーのおかずコーナーを頼るしかないのだが、早朝、わが子のために弁当を作る時間がないのはどうしてか、理由を聞けば、その家庭が持つさまざまな事情が浮き彫りにされるのだろう▼ただ、子どもに「本当においしい食べ物」とは何なのかということは正しく伝えたい。お金を出せば手間をかけず豪華な料理を食べることができる。しかし、たとえ質素でも、親の愛情が感じられる食べ物はお金では買えない。その経験は将来子どもが親になったとき生きるはずだ。
片隅抄