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片隅抄

2013.09.16

いわきの漁船の海難事故遺族を題材にした小説『海恋い』は、当地ゆかりの作家真尾悦子さん(93)の作品である。その中に、漁船の底曳き網に白骨がかかり揚がったというくだりがある▼その時、作品の中では、白骨の周りに夫や息子が事故で海に沈んだままの漁師の家族が集まり、自分の家族ではないかと見守る。「骨でもいい。着ていたシャツの切れ端でもいい」、それが遺された者の思いなのだ▼そして震災後、沿岸海域では、警察や海保など関係機関による行方不明者の一斉捜索が毎月、11日に合わせ続けられている。2年半がたった今月11日の捜索では、県内の何カ所かで、骨片や思い出の品などが見つかったという▼市内にも、いまだ37人の行方不明者がいる。月日を経るほどに、新たな発見が難しくなってきているのも事実。一斉捜索もいつかは、終わる日がくるのだろう。しかし、終わらない家族の思いがあることを、ここに暮らす人間として忘れたくはない。

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