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片隅抄

2014.08.25

かつていわきに、上泉秀信という農民作家がいたことを知っている人は少ないかもしれない。47歳だった昭和19年から同26年に没するまで、渡辺村(現渡辺町)で農業をしながら文筆活動をした▼この作家の一生を丹念に追い『農民作家上泉秀信の生涯』(歴史春秋社)として、本にまとめた人がいる。いわき地域学會員の中山雅弘さんだ(泉在住)。本は7月に発行された▼同書によると、上泉は山形県出身で、都新聞(東京新聞の前身)の初代文化部長や大政翼賛会文化部副部長を務め、自らも農村を舞台にした戯曲や小説を書いている。真の農民作家を目指していわきで農業を始め、執筆の傍ら県立磐城農学校の顧問を務めるなど、農村文化の発展にも尽力した▼上泉の作品には、渡辺村をモデルにした小説もある。中山さんの著書を見ると、没落地主と仲間の青年たちが、山林を切り開き牧場をつくる内容のようだが、「新しい耕土」と題されたそれへの興味もわいてきた。

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