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片隅抄

2014.09.20

市暮らしの伝承郷で開催している「いわき近代医学の事始め展」で、自宅に保管していた貴重な資料を市に提供した草野佳久さん(東京)が言っていた▼「さて、寄贈しようと思っても、市のどこがいいのかわからなかった」。いわきに博物館があれば、草野さんを悩ませることはなかった▼幕末から明治に移る中、いわきに新しい医学がどうもたらされたかを物語る資料だが、考古資料館、石炭・化石館、心平記念文学館、勿来関文学歴史館のどれも該当せず、総合図書館もあるが、〝暮らし〟というくくりで伝承郷に収まった▼郷土の文化や歴史に詳しい専門家は市内に数多い。散逸や破損の危機にある歴史遺産も少なくないはず。だが、それらの受け皿となる博物館がないのが現実である。本紙の紙面で、かつて博物館誘致の座談会を連載したことがあった。いま読み返しても関係者の熱意が伝わってくる。有形無形の財産を十分に生かしきれていない現状が悩ましい。

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